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December 2008

2008.12.31

グルグルの魔法でした

 仕事が忙しくて、風邪まで引いてしまって、目玉がくるくるグルグル回っちゃう状態でした~(^^;

 そんなときの息抜きに、『魔法陣グルグル』(衛藤ヒロユキ・スクウェアエニックス)を読みました。
 単行本16巻を、ほとんど一気呵成に~!
 
 登場人物がかわいくて、最後までゆるやか~な進行で、よかったなあと思います。
 初期の頃の感じを最後まで保って、しかもニケやククリという動かし方に工夫がいりそうな人物をちゃんと生かして書かれていました。かくありたし、という感じがいたします(^^;

 大晦日と、お正月の三が日は、ゆったりします~。
 ちょうど数日前から大阪から妹が(それよりだいぶ前に母も)帰省中です。
 二歳児の姪が、ぷっくりふくふくのほっぺでかわいいです。あはは。

 

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2008.12.26

ブッシュ・ド・ノエルの夜でした

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 初めて食べたので、感慨ひとしおです~! ノエルはクリスマス、ブッシュ(ビュッシュ)は丸太(木)ということで、クリスマスに食べる丸太のケーキ。
 ブッシュ・ド・ノエルです。

 陽気なスノーマン二人が、丸太を乗り物のようにしています。
 どこかへゆくのでしょうか。
 何かを届けるのでしょうか。
 
 
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 ビハインド・ビューにて。あはは(^^;
 年輪のうずまきがかわいいですね。そしてレター・プレートが翼みたいにも。突き出た丸太の枝は座席というところでしょうか。
 レッツ・ゴー。
 レッツ・イート・ゼム~(笑)。
 
 
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 なかなか大きいです。
 ケーキ屋さんのチョコレートケーキはくどくなく、口溶けも軽くていいですよね。
 
 
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 ボン・ノエル~♪
 たっぷりいただきました。晩ご飯を半分にして、それでもお腹が減りませんでした~。
 
 こんなに掲載したら、見てくださっている方もきっと「もう、たくさん!」と思うかもですね(^^;
 
 
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 斜めに生えたキノコがかわいかったので。

 そういえば、先日のラフランス以来、フランス関連が続きます。
 偶然ですけれど、ラフランスの三語を書いて数日後に、母がほんとうにラフランスをもらってきました(^^;

 そんなわけで、今年はブッシュ・ド・ノエルを食べたから、来年はドイツとかかなー。
 シュトーレンっておいしいでしょうか?
 (いや、おいしくないわけがない~!)
 

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2008.12.23

IdeaPad S10e のキーボード

 だいぶ、新しいノートPC IdeaPad S10e にも慣れてまいりました~。
 今までに使ってきた小さめのノートPCと比べると利点がたくさんあることがわかってきました。

 カシオペアFIVA とか、IBM Thinkpad240Z とか、レッツノートW2などを実際にモバイルできるサイズのノートPCとして使ってまいりました。余談ですけれど、実際には小説の執筆を外出時に行ったのはごくわずかなのが反省点です(^^;

 とくに、起動がとても早いのに驚きます。
 スタンバイではなく通常起動でも一分せずにアプリケーションが動きます。
 小さなPCは持ち歩くとか、場所を移動して使うことが多いので、パタンと閉じるのが苦にならないのはありがたく思います。すぐに起動するとわかっていれば、気楽に閉じられますよね。

 キーボードの使いやすさもいいですね。最初からキーボードを優先して選んだのですけれど、細かいところではPgUpキーがある(同時押しではない)ことも嬉しいし。小説を書くという意味では句点(「。」)キーが少し小さいので誤打鍵しやすいかもです。ただ、隣のナカグロ(「・」)キーを間違えて打つだけなので、文節の区切れ目を損なうような心配はないのが救いです。

 ちょっと仕事が忙しくなってきてしまったけれど、また小説を IdeaPad S10e で書いてみようと思っています。
 雑感があったら、また書きますね~。


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2008.12.19

小さな小さな IdeaPad がやってきました

 突然ですけれど(^^; ノートPCを買いました。
 ウルトラモバイルPCとか、ネットPCなどと言われているものの一つです。

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 IdeaPad S10e といいます。
 決め手はキーボードの打ちやすさと、バッテリが長時間もつことでした。
 なんと、6時間も駆動するのですよー。
 
 ためしに充電してから警告が出るまで使いましたけれど、ちゃんと5時間以上使えました。
 これならいつでも持ち出せる~♪
 
 
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 大きさの比較のために、ボールペンとシャチハタの判子を乗せてみました。
 これじゃあちょっとわからないかもですね(^^;
 じつは、先日掲載の『アルカイック・ラヴァーの隣で』は、この IdeaPad S10e で書きました。
 
 カタログスペックは、こんな感じです(^^;
 

Lenovo
 
 
 

日記・つぶやき2007~ | | Comments (2) | TrackBack (0)

2008.12.15

重湯が嬉しいのです

 入院のあいま、帰宅したおりに公園で見かけたバラを。

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 冬の雨に花びらがふるえるよう。
 肌寒さと雫とが色彩を引き立てる気がいたします。
 
 
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 華やかさにも、少しさびしい感じを受けたりも。
 きっと、枯れ落ちる未来を強く想像してしまうからなのでしょうね。
 
 
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 手術のあと、まる一日は絶食でした。
 点滴はわりと痛いですね(^^;
 看護士さんに「血管が細いですね」と言われました。そのためか、何度も「別の人を呼んできます」と交代して、ベテランの方に刺してもらったり(^^;
 そのせいで頭痛持ちなのでしょうか?
 どうかなあ?
 
 そして、絶食明けに食べるごはんのおいしいこと。
 重湯はほとんど固形物はない、ペースト状の汁ですけれど、今回もとてもおいしく思えました。
 
 
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 翌日は、三分粥にレベルアップです~。チャララチャッチャ、チャッチャ~♪
 おづねは
 かゆにこめつぶが20ふえた!
 みそしるにぐが3はいった!
 おかずが1ふえた!
 ……
 
 
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 朝食も、よく見れば米粒が~(笑)。
 黄色いのは茶碗蒸しです。
 具がまったくない、全部タマゴ味の茶碗蒸し。
 けれど、味はホンモノでした。もっと食べたかった(笑)。
 
 
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 大きな手術ではないとはいえ、こんな仰々しい機械をつながれました。
 自分の命を機械で測定されるというのは、こうして振り返ってみると、ちょっとおそろしい体験ですね。
 
 今回の二度の入院で、お粥のおいしさがよくわかりました。
 きっとこれからは重湯だって大好きに思えると思います。

 ちょっぴりの、あの激痛の記憶、手術の記憶、いろいろな記憶を呼び覚まされることでしょうね。
 重湯は、そんな人生の味。
 
 


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2008.12.14

『アルカイック・ラヴァーの隣で』(七枚)

 となりの席のスガノ君は、卒業文集に「好きなもの=仏像」と書いたくらい、ちょっと変わった子なのだった。
 好きこそ物の上手なれ、なんていうけれど、ときおり登校口の鏡の前で仏像のポーズの研究をしているのは、はっきり言ってやりすぎだと思う。
 仏像が好きなのも、ポーズを取るのも個人の自由ですけどね。
 でも、中学に入って最初のわくわくイベント、榛名湖の林間学校に来てまでやることか!?
 二日目の朝、私が通りかかったトイレ前でも、スガノ君は練習をしていた。「運慶作、大日如来像」とか、「作者不詳、法隆寺弥勒菩薩半跏思惟像」なんて言いながら。毎日練習に余念がないのだ。でも今日は林間学校だ。榛名湖畔の、共同生活だ。その横を通り抜けて女子トイレに入る人間の身にもなってほしい。なぜだかこっちが恥ずかしい。
 無言で通るのもシャクに触った。そこで、つい、
「スガノ、できるもんならやってごらん。千手観音」
 と余計なことを言ってしまったのだ。
 スガノ君はからかわれたとは思わない。リクエストだと受け取った。……のだと思う、たぶん。
 余計なことを言った私も悪いけど、クラス中の男子を廊下に縦に整列させてほんとうに千手観音のポーズをするスガノ君には「冗談を本気にするな」と声を大にして言いたい。
「見ていろよ、シモムラさん。十六人で三十二手だけど、名づけて“正面から見ればほとんど千手観音”ー!」
 ムカデ競走みたいにずらりと男子が並び、ごていねいに名簿の五十音順になって、手をいろんな形にしている。なんでお前ら全員スガノ君の言いなりなんだ。
 なんだなんだと女子連中や、他のクラスの生徒まで出てきて、爆笑の渦になった。
 ちなみにスガノ君の顔立ちは、整っている。たぶんテレビで子タレくらいには楽勝でなれる。そして、やっぱり本人が好きなだけあって、仏像にも似ている。教科書に載っていた如来像あたりを思い出してごらん。妙に中性的で、なまめかしい感じがするから。
 その顔でじいーっと見つめられて、私は思わず言ってしまった。
「人数に頼るのは安易だね。今日の午後のカヌーで同じことがやれたらほめてもいいけど!」と、憎まれ口を。
 一刻も早くトイレに駆け込みたいだけで、深く考えなかった。私が悪い。
 あのあとスガノ君がカヌーから落ちてずぶぬれになったのも、たぶん私が悪いのだ。ムリヤリ縦列になった揺れるカヌーの上で立ち上がったのは、千手観音するために違いない。私が挑発なんかしなければ、スガノ君は立ち上がらなかったし、ずぶ濡れにもならなかったんだ。
「銀行員になる」
「は?」
 成り行き上、クラスの男子どもから「シモムラがスガノを挑発した」「シモムラがスガノを介抱するべき」「シモムラによってスガノは慰撫されるべき」などと言われ、(なんで常に無条件にスガノ君の味方なのだ、あんたたちは! いろいろ変だよ、わがクラスの男子)しょうがなく、毛布でくるまれたスガノ君を私は介抱した。といっても、毛布をかぶって体育座りをしているスガノ君の隣に座っているだけなんだけどね。
 そこで、突然、スガノ君から将来の抱負を聞いてしまったのだった。
 銀行? まあ、無難に受け流すか。
「もしかして、稼ぎがいいから、銀行員?」
「うん。あと出世して大手企業から融資の相談を受けたりすれば、個人所有の仏像を見せてもらうコネができるかもしれないし」
「うわ、子どもらしくなー!」
 しまった、と思ったけれど、口が止まらなかった。たぶん、私は嫌だったのだ。スガノ君がではなく、目の前の中学生が将来のことを言ったりするのが。ずっと子どものまま、仕事のこととか進路のこととか考えないままいるのがよかった。だから、「将来のため」とか「自分のため」なんて大人から言われると頭に血が上る。そのとばっちりを、スガノ君に向けてしまったのだ。
 私は、スガノ君をあざけ笑った。
「さっき湖に落ちたのも、ほんとうは運動不足じゃないの? きっと銀行員になるために猛勉強しているんでしょ。あはは、スガノは偉いでちゅねー」
 私は馬鹿なんだ。スガノ君は私の言葉を冗談だと受け取らないって、今朝から二度も教えられていたはずなのに。冗談を言ったつもりで、スガノ君を傷つけていた。
 たぶん、私のことを好きでいてくれて、正直だからそのことをクラスの男子にもバレバレのまま、私にわざとらしく関わってくる。そんなスガノ君を、私は傷つけていた。
 スガノ君、私もほんとうは気づいていたよ。けれど、ちょっと顔もよくて、性格も変だけど素直で、男子からも女子からも好かれている君を、私が取ってしまうのが怖かったよ。みんなにねたまれるのが嫌で、ついスガノ君によくない態度ばかり取ってしまったよ。
 ほんとうは、君に好かれて嬉しかったのに。
 将来、きっと銀行員になってね。
 たぶん、そのときにはもう意地悪な私のことなんて、好きじゃなくなっていると思うけれど。
 そう心の中で思って、何度も「ごめん」を口の中で繰り返した。でも、言葉にはできなかった。
 スガノ君は、湖のさざなみを見つめて動かない。何分も、何十分も、動かない。林間学校の建物の中が騒がしくなったり、しーんとしたり、またガヤガヤしはじめたりして、授業と休み時間とが繰り返されて、そして、スガノ君は動かなかった。
 そっと横からのぞくと、いつもの変わらない顔だった。でも毛布の下の目のふちを、ほんの少しだけ、赤くしていた。
 私は私の唇を噛む。
 きつく、力いっぱい噛みしめて、鉄の味ごと唾を飲み込む。
 何度も、何度も。
 私が私を許そうと思えないから、ずっと。
 
 
-了-
 
 
 
(※『作家でごはん!』 三語即興文投稿作品:【毛布】【運慶】【銀行】)

(※意外にも【銀行】がきつかった~(^^; 唐突感があるのはいいけれど、不自然になってしまっていたら……と危惧いたします)

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2008.12.07

一時帰宅しています

 手術しました~。
 突然ですみません(^^;

 全身麻酔はほんとうに時間を越えたかのようでした。

 たぶんこれであとは何度か通院したりしばらく内服薬をきちんと飲んでいればいいのだと思います。

 今日は外出許可をいただいて、少しだけ仕事をします。
 明日、正式な退院です。
 すぐその日のうちから仕事をします(^^;
 

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2008.12.01

『トレンチの魔法使いと聖女の記憶』(七枚)

 トレンチ(塹壕)の中で老兵士と一緒になった。
「若造、助かりたいか?」
 ヘルメットに落ちてくる泥を左手でぱっぱっと払いながら、爺さんは声をかけてきた。命の瀬戸際だというのに、暢気なのか図太いのかわからない。
「当たり前だ。こちとら身重の嫁さんを国に待たせてある」
 無視しなかったのは老人への敬意というものを僕がわずかに残していたのと、そして、なによりも気を紛らわせなければ攻撃をしのぐ間を僕自身が耐えられなかったからだ。この日、枢軸側の猛攻は極みに達していた。前方ばかりでなく、左右からも、背後からも敵の着弾による爆裂音が響く。完全に射程に侵入を許している。
「元気な返事だ。そうか、それならいいものを見せてやる。私はほんものの魔法使いなんだ」
 爺さんは襟元からロケットを取り出した。僕は真に受けたりはしなかった。誰でも方便で、自分は魔法使いだとかサンタクロースだとか言うものだ。が、方便に乗ってやってもいい気持ちになっていたのも事実だった。
 爺さんはロケットを開いて中を見ろという。
 銀色の扉はかすかな金属の音とともに開いた。中から淡い水と森の色があふれてきたように感じた。
 絵画にたいして興味のない僕も、目を引きつけられた。やわらかなタッチで描かれた裸婦像だった。マネの描くような飾り気のない裸の女性が、木の蔭から上半身だけ出してこちらを伺っている。豊かなブルネットが裸身にイバラのように絡みついて、むしろその肢体ののびやかさを映えさせていた。印象だけを抜き出せば、マネのような印象派というよりは、ルネサンス期のジョットの描くような聖女が僕には連想された。
「何がほしいの?」
 と、裸婦の声が聞こえた気がした。
 たぶん、戦場での極度の緊張が、幻聴のようなものを生んだのかもしれない。僕はそれを不思議にさえ思わなかった。考えるより先に、ためらう間さえなく僕はその女性に言っていた。

 ――僕は、

 そこから意識の空白が訪れたらしい。ぼくは、彼女に何かを願ったのかどうかさえ自覚がないまま、現実に戻された。
「おい、引き上げの合図が出たぞ」
 気づくと、爺さんが脇腹を小突いていた。
「ところで、何を願ったんだ」
 僕はようやく、自分が絵を見たこと、その中の裸婦に何か聞かれた気がしたのを思い出した。どうやら僕は問いに答えたらしいこともわかる。願い事だったのか? 何を願っただろう。それだけは、思い出せなかった。
「思い出せないよ。でも、そうだ。覚えてる」
「なにをだ?」
「最後に、その女性は俺にウィンクしてほほえんでくれた気がするんだ……」
 爺さんは最初、じつにつまらなそうにまぶたの垂れたままの目で僕を見下ろしていた。『私の知りたいのはそこじゃあない……』と、唇を動かさずに言ったように思えたが、気のせいだったかもしれない。
 突然、彼は口の両端をぎゅうっとつり上げた。それから大声で言った。笑いながら、
「ばはははは、そうか、そうか。それじゃお前さんは生きて帰れるのだろう。じつはお前さんは本来なら生きて還る望みはほとんどなかったんだ。一人で子を産んだかみさんも長患いをしてな。私はひょんな偶然から、お前さんの娘に頼まれたよ。それも、十五の若さでありながら昼も夜も熱で床から起きあがれない病身で、瞳のスミレ色ばかりが輝いていてな。それで興味を持った。運命が変えられるのなら、私の運命もまた、変えられるかもしれないと。お前さんは私の実験につきあってくれたな。なに、お前さんにとってはもっぱら転がり込んだ僥倖というものさ。お前さんは願いをうまくやりおおせた。子どもは身寄りのない寂しさを与えることも、お前さんには起こらない未来になっただろう。よかったな!」
 爺さんのつばが顔中に飛んでくるのも僕は上の空だった。ウィンクした裸婦の黄色みがかったハシバミ色の瞳を思い出していた。
「ああ、それにしてもなんと願ったのか知りたかった。若かった私が彼女をロケットの中から失い、二度と見つけられなくなったあのとき、どう願えばよかったのか。それだけが知りたかったというのに。願いが叶っても彼女は戻らない。ああ」
 周りの兵士が次々にトレンチを脱出していく。僕もようやく正気に返って、泥の底から這い出した。ふと見やると、爺さんの姿はもうなかった。
『忌まわしい、あのときの戦場くんだりまで来て、私はいったい何をしているやら……』と、声が聞こえた気がした。

 まもなく戦争が終わり、捕虜の交換も済むと、僕は家に帰ることを許された。爺さんの姿はやはりどこにも見つからなかった。ただ、僕と同じくらいの若い捕虜がたったひとつの私物として大事に手のひらに包んでいたロケットと、うつむき加減の瞳のハシバミ色とが、ほんの少しだけ気になった。

 帰郷して一ヶ月後には、僕は無事に父親になった。
 娘は母親に似てヒマワリのようなブロンドの髪をしていた。ただ瞳の色だけが、両親のスミレ色を受け継がなかった。その色は、黄色がかったハシバミ色をしていた。
 その色の瞳でぼくに笑いかける彼女を見るたび、僕は思い出す。
 あの人はたしかに願いをかなえてくれたのだと。
 瞳の色は、運命のちょっとしたすげかえを知らせる徴(しるし)なのだと。瞳のスミレ色と引き替えに、ひとつだけの願い事を叶えた彼女のささやかなサインなんだとわかるのだ。
 ぼくはあのとき、自分の命を願わなかった。
 もう、いつでもはっきりと思い出せる。

 ――生まれてくる子どもの無事を祈る……。

 たしかにそう願ったのを。
 もうじき娘が十四歳になる。もうじき彼は来るだろう。昔、捕虜だった男がきっと娘に会いに来るに違いない。
 そうしたら教えてやろう。
 自分自身ではない、自分がほんとうに大切に思う人のことを願うといいと。過去をやり直せるとしたら、ただ一人の他人のことをだけ心に浮かべるといい。そう、言ってやろう。


 -了-


(※『作家でごはん!』鍛錬場・三語即興文投稿作品:【トレンチ】【身寄り】【絵画】)
(※少し手を入れてみました。人物関係が整理されているといいのですけれど(^^; どうでしょうか……?)
 

 
 

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『りえぞーとぼくのアンシェヌマン』(六枚)

 ぼくの祖先は“ラフランス”だった。
 りえぞーが発見した。
 亡くなったじいとばあの部屋には江戸時代の祖先の写真が飾ってある。長押(なげし)の上に七つ並んだモノクロームの肖像は、名前も知らないぼくのルーツだ。そのいちばん古くてうすぼんやりしたのが、江戸時代に藩の家老だったというご先祖だ。
「ラフランスだ!」
 八百屋をやっている畦沼理恵(あぜぬまりえ・通称りえぞー)が指さして言った。
「あ? 何?」
「いい形だねー。あの輪郭(りんかく)。知ってる? ラフランス。洋梨だよ」
「オレの悪口?」
「まさかぁ。いい形だよ。あたしもばあちゃんも大好きな果物だよ」
 と言ってから、りえぞーがきょとんとした顔つきになった。「えっと、何しにこの部屋に来たんだっけ?」なんて言っている。
 ときどき、こいつの回転の速さにとまどう。年末の大掃除なみにあわただしいやつ。
「明日の授業で使う葉っぱを探しにきたんだよ、中庭に」
「あ、それならあたしももらっていい?」
「そう思って連れてきたんだよ」
 あ、それでこの部屋なんだ、そうかそうか、こっちが中庭ね、なんてりえぞーは六年生にもなって友達の家をどかどか足音たてて歩き回る。お互い、しょっちゅう一年生のころから家まで遊びにいっているから、これでいいんだけど。
 仏壇と額縁しかないその部屋は、小さな中庭に面している。そこには秋の終わりに落葉が吹きだまる。人の通り道は毎日ほうきでかあちゃんが掃き清めているけれど、植え込みの下や、大きな木の根本のはずっと残っている。持ってきた靴で中庭に下りて、葉っぱ探しをした。
「コントラストを考えなくちゃね」とりえぞーが言う。
「なにそれ?」
「色の対比。ばかねぇ、今日の授業で先生が言っていたじゃない」
「わかったよ。でもばかはよけいだろ」
「ねえねえ、この黄色いの、もらっていい?」
「いいけど、オレはばかじゃないぞ」
「赤いのもみっけ! 赤いから縮めてアキっていうのかなあ? ねえ?」
「……オレはばかだからわかんねえ」
「ん? 選次郎(えりじろう)はばかじゃないよ?」
「……むぐぐ(こ、この女)」
 かみ合わないのは、ぼくが悪いんだろうか? けどりえぞーに悪気がないのなら、それでいいのだ。りえぞーのうつむいた顔に髪がかかるのをクラスの目を気にしないで見ていられたのはうれしかった。大好きって言っていたのもよかったな。ラフランスのことであるとしても。

 次の日。
 図工の授業で、葉っぱの栞(しおり)を作った。
 クレヨンを使って模様や文字をつけてもいい、コラージュ風にちぎってもいい、と先生は言った。ぼくは洗面所の鏡に映った自分の顔を葉っぱでデッサンしようと思った。自分の顔がマネキンに見えるまでじっと見つめて、でもどうしてもピーマンやワッフルに見えてしまったり。
 覚えた自分の顔の形にハサミでちょきちょきする。先生の机に持っていく。プラの板ではさんで機械でラミネート。ぷしゅう。穴を開けて、かざりのひもをつけて完成。
 帰りに、りえぞーに誘われた。
「ラフランス見せるから」
 だって。

 りえぞーの家は八百屋だから、子ども部屋や寝室は二階にある。一階はお店と、奥の間とトイレと風呂しかない。
「ラフランス、じいとばあにあげてよね」
 と袋を持たされた。紙のぱりっとした袋にたぶん四つ入っている。
 ぼくが手に持って横や下から眺めているのを見て、りえぞーがヘンな声で言った。
「何? 傷んでいるのなんか、入れていません」
「ばっ、違う。ラフランスってどんな形かと思って」
 ああ、とりえぞーが納得した顔になった。だいたいラフランスを見せるからと言って呼んだ本人がシルエットクイズにしているのじゃ世話がない。
「んー、家に帰ってのおたのしみ、でもいいけどねー。ちょっと待って。まだあるかもしれないから」
 と言ってりえぞーは部屋を出て行った。
 と、それからぼくはずいぶん待ったと思う。何度も一緒に遊んだ部屋なのに、なにかがちょっと違ってきている気がする。来年の四月には中学生になる女の子なんだから、当たり前。このごろぼくたちは、いろんなことが違ってきている。違ってきていて、アタリマエ。
 窓から顔を出してお店の様子をうかがう。おじさんとおばさん、お客の声はする。りえぞーの声はない。
 階段下だろうか。ぼくの行ったことのない奥の間なのかもしれない。そっと降りてみた。
 襖(ふすま)を開ける。音ひとつ立てずに襖はすべって、部屋と廊下を一続きにする。
 しなびたばあちゃんが寝ていた。
「いつか言っていた、寝たきりのおばあちゃん……」
 すぐにわかった。
 そして、枕元にはラフランス。
 きっとばあちゃんの好物なんだ。籠に七つほど盛られている。
 ばあちゃんはまるで生きていないみたいに、動かなかった。線香みたいな匂いのする部屋で、目をつぶっていた。しわくちゃの口元が少し開いていた。
 十数える間に、布団がゆっくり三回だけ上下した。
 りえぞーの家は、今はとうちゃんとかあちゃんが八百屋をやっているけど、ぼくやりえぞーが生まれた頃まではばあちゃんも店に出ていたと言っていた。
 気づくと、
「選次郎(えりじろう)」
 と声がする。りえぞーが呼んでいる。
 あれ、いつの間に部屋に戻ったんだよ。だいたいどこに行っていたんだ。ぼくを放っておいてさ。
 葉っぱの栞は、ばあちゃんの部屋に置いておくことにした。。
 なぜなら、ばあちゃんにあげるのがいちばんいいと思ったから。
 ぼくが作ったのは、うすみどり色の葉っぱの栞で、ぼくの顔の形にしたのが真ん中にぽちっと貼られた栞だ。つまり、その形ラフランス。鏡の中で、ぼくの顔はやっぱりラフランスに落ち着いたのだった。
「りえぞーのばあちゃん、ラフランスの栞、プレゼントです」
 ばあちゃんの胸の上で、布団がいつもより少しだけ大きく上下した気がした。
 部屋を出て、指先に力を込めて襖を閉じる。目の前でぴしっと部屋と廊下が区切られたのを見てから、ぼくは階段を駆け上がる。
 もう一度聞いてみよう。りえぞーに。
 ラフランス、好き?って。
 きっと答えてくれるだろう。
 大好きだよ。
 って。
 どんな意味が込められているかなんて、そんなのわからなくてアタリマエ。
 
 
 -了-
 
 
(※長いので未投稿です(^^; 三語即興文:【階段】【ラフランス】【落葉】冬のお話で)

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