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2006.07.07

『岩盤浴場の怪』(一枚)

 黒電話が鳴ると彼は岩陰に隠れる。月明かりの晩は、廊下のその場所からは彼の姿が見えてしまうのだ。
 じっと息を殺して、天然のプラネタリウムを見上げる。
 露天岩盤浴場に住み着いてどれくらいの光陰が彼の頭上を過ぎ去っただろう。四百年……彼に名前を与え、彼を恐れ、彼を敬った者たちはとうに土の下へ。
 そんなとき彼はそっと人型になって昔を偲ぶ。
 黒い体躯から白い影が伸びる。伸びて啼く。
 星の海を見上げて、遠く啼く。
 
 ぴろろ
 ぴりろろ
 ぴぃろろろ……

-了-
 
 
(※三語即興文『人型』『黒電話』『プラネタリウム』。課題『切ないお話にすること』)

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