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2004.07.23

『サレミィと終末の日』(三枚)

 二人の未来を決定づける発端となる映像は、私ことサレミィの目蓋に映ったこんな予知夢だ。藍色の空の下に躍る一面のオレンジ、炎の映像。足下から吹き上げる猛熱をはらんだ強風に私の自慢の栗色の髪が煽られて乱れているけれど、私は少しも頓着しない。炎にも風にも負けない強い視線で大地をにらみつけ、隣の誰か知らない男の人に向かって力強く言うのだ。「飛ぼう」と。私の褐色の手と、彼の華奢で白い手が重なって、私たちは決意する。とん、と足首のステップで床を鳴らして、上昇する宇宙船から、炎に呑まれて苦悶する都市へとダイブする。炎熱の風、冷たい彼の手、重力から解放されて落下という自由を得る私たちの体――。予知夢は、そこで唐突に中断した。「サレミィ、あなた書記ですのに、居眠りとはいいご身分ですわね」鬼より怖い生徒会副会長が私のこめかみを『ウメボシ』していた。さっきまで鉢植えの根菜類に何か話しかけていたはずなのに、鋭い人だなあ。痛い、いたた、あたたたたたた。ほあちゃあ。私は痛みで再び薄れそうになる意識の中、さっきの夢の意味を考えていた。あれは終末の映像、あれは地球の未来? 学校の帰り道、私は同じく書記の井垣くんと一緒にゲームセンターに寄り、あっさりと夢の正体を知った。『バーチャル・シミュレーター 地球滅亡の日』今日入ったばかりの最新大型筐体、一プレイ五百円。直径五メートルはあろうという大きな球体の中に入ると、中には温冷風ジェネレーターやら、慣性重力シミュレーターによる回転機能やらが、プレイヤーを迫真の世界に連れて行ってくれるというわけだった。「あなたは地球最後の戦士です。見事に地球を救うことができるか!」こんな恥ずかしい謳い文句がちらっと目に入る。私はちょっとドキドキする。井垣くんの方を横目でこっそり覗き見ると、やっぱりあの時の、白くて華奢な指だった。居眠りをしていた私に映像を送った『ラプラスの魔眼』は、きっとこのあとの私の気持ちの高まりを察知したんだろうな。「あのさあ、サレミィ……」私の耳が、井垣くんのためらいがちな呼びかけを、私に告げていた。しっかりしろ、サレミィ。井垣くんと地球を救え。私は私に必死で声援を送っていた。

-了-

(三語一行:お題「えい とぼ たん」)
※変な作品ができました(^^; 生徒会の書記はサレミィ(アジア系の留学生?)と井垣くんというらしいです。

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