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2004.05.10

『秋の命』(三枚)

 私はこの星の秋がさびしくないように、光がかげる季節にも萌える木や草を用意しました。子犬の尾のようなふさふさの綿毛が河原いっぱいに揺れる頃、春に飛んだシロバナタンポポの種は芽吹きます。ホトケノザやオニビラコは、立ち枯れた茅(かや)の下に緑の指先をちょこんと出すのです。
 八幡神社は、街がすっかり近代化した今でも広い敷地があり、一部は駐車場や中学校のテニスコートになっているものの、メダカたちの学校になっている大きな池や、どんぐりをたくさん降らせる裏山のある、昔のたたずまいを残した古い社です。
 おや、境内に小さな子が二人、いるようです。軒下で、何かを真剣に話し合っています。
「ブチとクロ、鼻水たれてるよぉ。どうしよう」
 男の子が悲しそうな声で言いました。巻き毛が夕陽に照らされて金色のススキの穂のようです。
「セージちゃんは男の子なんだから、しっかりしなしゃい。おかあちゃまにいつも言われているでしょ」
 どうやら姉妹のようです。お姉さんはしゃがんで紅葉の色のスカートの上に二匹の子猫を乗せていました。
「でも、リンドおねえちゃん、どうしたらいいの?」
「わかんない。けど、冬になったらブチもクロも死んじゃうかもしんないわ。どうしよう」
 二人は、つい先だってここで子猫を見つけて世話をしていたのでした。母猫の姿は見あたりません。秋になり、栄養もあまり十分ではない子猫は、病気になってしまったようです。
 私は子どもと子猫のそばに降り立ちました。でも、透明な私は誰にも見えないようです。
 少し思案して、私は境内の狛犬に入り込むことにしました。その口を借りて、二人の子どもに伝えました。
「子どもたち、隣のテニスコートにいるお兄さんたちに子猫を見せてごらん」
 二人は不思議そうにあたりを見回していましたが、やがて駆けてゆきました。
 数日前、いつもにぎやかなテニス部の少年二人が、二学期のボランティア活動の内容が決められないとしゃべりあっていたのを聞いたのを思い出したのでした。毛玉のようにころころした二匹の子猫の里親探しは、きっと少年たちにもいい経験になるでしょう。
 秋にも、ほのかに息づく命がある。
 ころころとまろぶように駆けていく姉妹、あの子らを見送ったら、私はまた眠りにつくことにしましょう。

-了-


(三語即興投稿作品:「近代化」「萌え」「透明」追加ルール「かわいい物や人(動物などもアリ)を出来るだけ出す」)

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