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2004.04.09

『山彦海彦と兄弟熊』

 むかしむかしのこと、このあたりに山彦と海彦という若者が住んでおった。
 ある晩のこと、山彦の家の囲炉裏端で、山彦と海彦はこんな話をしていた。
「海彦よ、あの兄弟熊にもほとほと参ったのう」
「山彦よ、お前のところは何をやられた」
「我が家ではあの二頭の熊は畑をすっかり荒らしてしまった」
「我が家ではあの二頭の熊が鮭をみんな盗んでいった」
「このままでは、おとうもおかあも、冬の間食べるものがねえ」
「息子も娘もひもじい思いをすることになる」
 そんなわけで、二人は熊退治に向かうことになったんだと。
 山彦は自慢の弓矢を、海彦は得意の銛(もり)を持って沢ぞいのけもの道を上っていった。
「海彦よ、あちこちの枝にたくさんの木の実がなっておる」
「では我が銛でつついて落とそう」
 二人はあけび、山ぶどう、クルミなどの木の実をどっさり手に入れた。
「山彦よ、向こうに鳥が見えるぞ」
「では我が弓矢で撃ち落とそう」
 キジ、ヤマドリを何羽か撃ち落とし、それも二人は手に入れた。
「のう海彦よ」
「なんだ山彦よ」
「これだけあればしばらくは食うに困らぬなあ。兄弟熊退治をせずともよいのではないか」
「だがきっとまた熊たちは我々の食べ物を荒らしにくるに違いない」
「では退治しなくてはならないな」
「退治しなくてはならないぞ」
 そんなわけで二人はどんどん奥へ進んでいった。
 目的地に近づくにつれて、あちこちの木に新しい爪痕が目立ち始めた。
「もうじきだぞ、海彦よ」
「ああわかっている、山彦よ」
 二人は慎重に熊の足跡を見つけてたどっていった。そして熊の住処である洞穴を見つけた。中からは物音は何も聞こえなかった。
 松明の明かりで洞穴を照らしてみると、洞穴はさほど深くなさそうに見えた。兄弟熊はいないように見えたが、いちばん奥までは光が届かない。
「入ってみるか、海彦よ」
「入ってみよう、山彦よ」
 二人が足を踏み込むと、なんと、洞穴の奥には兄弟熊よりもずっと体の大きい雌熊が体を横たえていた。
「これは母熊じゃ」
「しかも大けがをしておる」
「ああ、この体では動けまい」
「さては、兄弟熊はこの母親に食べ物を運んでいたのか」
 二人は顔を見合わせた。そして黙ってうなづきあった。
 洞穴を出た二人の手にはそれぞれ、出発したときと同じ、弓矢と銛が残されているだけだった。
「熊には取れない木の実を見つけたしのう」
「熊には狩れない鳥がいるしのう」
 山彦と海彦は帰り道でも木の実と鳥をたくさん手に入れて、それぞれ我が家に帰った。
 母親を大事にする兄弟熊の話がのちの世にも伝わって、このあたりでは二頭の熊と母親を木彫りにして家ごとに必ずひとつ、備えるようになったんだと。

(『熊』『鮭』『木彫り』追加:『おとぎ話風に』)

ま、また出遅れてしまって投稿できず……。時間をかけすぎているのかなあ。

追記:でもあまり参加するのが遅くなるのも申しわけないと思って投稿してしまいました(^^;
   事故作品なので、にぎやかし程度のもととして読んでいただければと思うのですが。
追記2:ちょっと改稿しました(20040411)

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