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2004.04.08

『モサと青い鳥』(四枚)

 港公園の見えるこのマンションのベランダで羽根休めをするのが、オイラの日課だ。
 青い小鳥になって、ほんのちょっとした幸運と不運とをバランスよく人間たちに届けるのが運気の精の一人たるオイラの役割だ。けれど、担当地域はとても広くて、オイラ一人じゃ「誰にも平等に幸運を」なんていう風にはとてもとても。
「ばうばうばうん」
 うわあびっくりした。
 モサのやつがベランダに出ていたなんて気づかなかった。モサというのは、この部屋の住人である一人暮らしの男の飼い犬だ。チャウチャウ犬ともう少し大きい犬との雑種らしい。毛がモサっとしているから、モサ。たぶん。
 犬のくせに室内が大好きで、外に出て散歩をするのが嫌いな変わったヤツなのだ。食べ物も肉よりサラダが好きという、野性味が抜けてモサーっとしたヤツなんである。
「ばうん」
 こんな風に吠えてくるのは「こんにちは」の意味だ。でもおかしいな。今日は木曜日、モサの主人は会社だろ。うん、ベランダのガラス戸だって鍵が閉まっている。
「モサ公、お前さん、もしかして閉め出されたのか?」
 たぶん朝のうちにベランダに出てそのままゴロゴロしていたに違いない。でもって、いつも遅刻ぎりぎりに出ていく主人がうっかり扉に鍵をかけてしまったってところだろう。
「じゃあお前、今日は主人が帰ってくるまで餌も水もなしってことかい?」
「ばうーん」
 そりゃあちょっと気の毒だ。オイラはこの小鳥の姿じゃ何もしてやれないが、何かあるといけないから今日はこのままつきあってやるか。
 モサの毛皮の上で一時間ほどオイラはうとうとしていたらしい。
「おい、モサ、いるか~!」
 主人が昼休みを利用したらしく、帰ってきた。どうやらモサのやつ、運よく思い出してもらえたようだ。
 もっさりとした姿が部屋に無事入ったのを見届けて飛び立とうとしたオイラに、モサが何かをくわえてもってきた。自分が主人からもらった宝物のひとつらしい。
「ありがとよ」
 新品ぴかぴかの小さな爪切りをオイラはもらって、飛び立った。
 それ以来、鏡がわりになった爪切りは、いつも朝の羽根づくろいに大いに役に立っている。

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